東京地中熱ポテンシャルマップ

「東京地中熱ポテンシャルマップ」は、都内における地中熱の採熱可能量(ポテンシャル)の目安が一目でわかるマップです。

東京地中熱ポテンシャルマップの概要

  1. 東京地中熱ポテンシャルマップ作成の目的
    • 東京都では、平成27年度に策定した「東京都環境基本計画」において、都内の再生可能エネルギーによる電力利用割合を、2030年までに30%まで高める目標を掲げています。この目標の達成に向けては、供給側だけでなく需要側の取組が必要であり、同計画において、需要側の取組の一つとして地中熱等の再生可能エネルギー熱の導入を推進しています。
    • そこで、地中熱のさらなる導入拡大を図るため、都内における地中熱の採熱に必要な熱交換井の長さや有効熱伝導率等の分布状況を「東京地中熱ポテンシャルマップ」として公開することで、地中熱利用の導入検討時の参考としていただくことを目的として作成しました。
  2. 地中熱ポテンシャルマップとは
    • (1) 地中の熱を利用する
    • 地中は、気中に比べ年間の温度差が少なく、特に10m以深はほぼ一定の温度(平均気温相当⇒東京は17℃程度)になります。
      • 夏⇒外気温が35℃     地下10mでは17℃ ⇒20℃近く地中の方が冷たい
      • 冬⇒外気温が 5℃     地下10mでは17℃ ⇒10℃以上も地中の方が暖かい
    • この夏場や冬場の気中と地中の温度差を利用するのが、地中熱利用です。
    • エアコンの室外機を気中に置くよりも地中に置く方が、夏場は外気中より冷たい地中の熱で冷却(放熱)し、冬場は外気中より暖かい地中の熱で加温(採熱)することができるため、ずっと少ないエネルギーで冷暖房することができます。
    • つまり、エアコンの冷暖房は、外気を利用するより地中を利用する方が年間のエネルギー使用が少なくて済みます。これが、地中熱を利用するメリットです。
    • 気中と地中の熱利用効果の違い
      気中と地中の熱利用効果の違い
    • 外気を使った一般的なエアコン 地中の熱を使う冷暖房
      外気を使った一般的なエアコン 地中の熱を使う冷暖房
    • (2) 地中熱ポテンシャルマップの必要性
    • エアコンを少ないエネルギーで利用できる地中熱利用は、地面があればどこでも利用できることが、大きな特徴です。
    • ところが、場所によって地面の下の状況は異なります。例えば砂層、岩盤層、粘土層など、地層の順序や厚みは場所ごとに違ってきます。これら場所による地層の特性の違いが、場所による熱の利用のしやすさに違いを生んでいます。
    • 地層の構造より放熱(採熱)のしやすさが異なり、エアコンの効率(エネルギーの使用量)に差が生じます
    • しかし、こうした地下の構造については、地表からはわかりません。そこでこうした地下の構造の違いによる地中の熱利用のしやすさの違いを地図上に色別表示することで、一目でわかるようにしたマップ「東京地中熱ポテンシャルマップ」を作成しました。
    • 東京地中熱ポテンシャルマップ
      東京地中熱ポテンシャルマップ
    • (3) 東京地中熱ポテンシャルマップの種類と概要
    • 東京都の地中熱ポテンシャルマップは、3種類のマップで構成されています。(島嶼部は除く)
      • ① 見かけの有効熱伝導率の分布
      • ② 建物種別ごとの採熱管本数の分布
      • ③ 建物種別ごとの採放熱量の分布
    • ① 見かけの有効熱伝導率の分布
    • 前述の地下の地層の構造だけで熱の利用しやすさを表現したものを「有効熱伝導率」と言います。これに対し、地下の地層の構造に加え、熱の利用しやすさに大きく影響する地下水の水位や流れを考慮したものを「見かけの有効熱伝導率」と表現し、深さ方向の見かけの有効熱伝導率の平均値をマップ画像に表現しています。見かけの有効熱伝導率は、地下水の影響を考慮しているため、実際の熱の利用しやすさに近いといわれています。
    • なお、水平方式のマップは、地表下5m地点での地層の地下水の効果を除外した「有効熱伝導率」で表しています。
    • ② 建物種別ごとの採熱管本数の分布
    • 地下の構造が同一で熱の利用しやすさが同じであっても、巨大な商業施設と住宅の冷房では、利用する熱の大きさが異なります。地中熱の利用では、採熱管という地中の熱を受けとる装置(パイプ)を使用しますが、巨大な商業施設のように多くの熱を放熱する必要がある場合には、たくさんのパイプが必要になります。一方、住宅の冷房程度であれば商業施設と比較してずっと少ないパイプで足ります。このように建物の種類や用途によって、採熱管の本数(長さ)が違います。この違いを色別に表示したマップが「建物種別ごとの採熱管本数の分布図」です。
    • ③ 建物種別ごとの採放熱量の分布
    • 地中熱の利用は、地下に大きな蓄熱タンクを持っているのと同じで、夏場にはエアコンの熱を放熱することで、地下の温度が徐々に上昇して(冬場は逆に温度が徐々に下がって)外気との温度差が徐々に小さくなってしまいます。このように地中熱利用の利点である外気との温度差が小さくなると、その分効率は下がってしまいます。
    • 地中熱の利用効率は、どれだけの熱をどのくらいの時間をかけて放熱・採熱するかにより変化するため、建物の種類や用途により、地中から得られる熱量は違います。この違いを採熱管1mあたりの採熱量として示したマップが「建物種別ごとの放採熱量分布図」です。
  3. 東京地中熱ポテンシャルマップの利用方法と利用上の注意
    • 地中熱利用について、現状では、認知状況が十分でないことに加え、初期投資における掘削費用の検討や地中熱採熱管の設計などが専門的であることが原因で、建物建設時や空調設備のリプレース時の基本設計において空気熱源のエアコン等との比較検討案として採用されにくいことが課題となっています。
    • そこで、東京地中熱ポテンシャルマップでは、設計技術者の利用しやすさを考えて、建物種別ごとの採熱管長さ(本数)の分布図と採放熱量の分布図を提供しています。これまでに地中熱ポテンシャルマップの一つとして作られてきた有効熱伝導率の分布図では、初期投資における重要な項目である採熱管を設置するための掘削費用(主に掘削長さと掘削数が費用に影響する)がわかりにくいという課題がありました。そこで、建物種別ごとの採熱管長さ(本数)や放採熱量の分布図を(平均的な条件を想定した計算ではあるものの)図示することによって、大まかな初期投資を計算するための目安として利用することができます。
    • ただし、東京地中熱ポテンシャルマップは、地層モデルや地下水流動解析モデルにより推定した見かけの有効熱伝導率を基にした計算結果であるため、地中熱ヒートポンプを利用した空調システム設計の概略計画段階で、他の空調システムとの比較検討を行う際の目安として利用することを想定しています。
    • したがって、空調システムの詳細設計を行う段階では、十分な採放熱量を確実に確保できるよう、現地での熱応答試験(TRT)のデータを利用するなどにより、正確なデータを取得して、現地地盤で測定した有効熱伝導率を用いた設計を行うことが望まれます。
    • また、採熱管本数については、マップ上では空調システム全体を地中熱利用で賄うという考えで計算されていますが、実際には、敷地条件を考慮すると数百本の採熱管を狭い敷地に設置することが不可能な場合が想定されます。
    • したがって、実際の設計では、空気熱と地中熱をバランスよく利用するなど、ハイブリッドな空調システムを採用することが現実的と考えられます。特に、熱需要の大きな施設などを設計する場合には、マップで示される必要本数だけを見て導入が困難と判断せず、共有部分への部分的な導入などの可能性を検討していくことが重要です。